私は、平成31年(2019年)3月まで、お子さんの外科的治療つまり手術を専門とする外科医、小児外科医ででした。治療する病気やけがはさまざまですが、その中には、鎖肛(さこう)やヒルシュスプルング病といった、比較的まれで手術が必要な排便にかかわる病気があります。このようなこどもたちは、手術後も排便については慎重に経過をフォローすることが必要です。そのため、「小児便秘外来」という専門外来を開き、このような術後の患者さんたちをフォローすることにしました。

 「小児便秘外来」は、手術後のお子さんたちのために開いたのですが、そのうちに便秘に悩むお子さんたちが、開業医の先生から紹介されたり、ネットで探し当てて来院されるようになりました。やがて、こどもの便秘の治療について小児科医や小児外科医の仲間たち(私は彼らを「おしりあい」と呼んでいます)と研究会などで話すうちに、2013年には「小児慢性機能性便秘症ガイドライン」もつくられました。ガイドラインを作った仲間たちはパンフレットを作ったり、テレビやラジオに出演したり、新聞に記事が掲載されたりしてきました。私自身も開業医の先生たちに何度か講演してきました。

 これは、こどもの便秘に悩むご家族が多いことを示しています。外来でお子さんの便秘の診療を続けるなかで、ご家族と話したり、いろいろと調べるうち、どうしてこどもが便秘になるのか、排便のしくみはどうなっているのか、こどもにとって食事とは何か、家庭での食事はどうあるべきか、こどもの便秘はどうやって防げるのか、こどもの便秘はどうやってなおすのかよいのか、トイレトレーニングはどうすればよいのか。いろいろ考えてきました。そして、令和2年、2020年のこどもの日に、このホームページをつくり始め、現時点での私の考えの到達点を公開することにしました。その根底にあるのは、便秘で悩み、苦しんでいるこどもたちやご家族がその悩みや苦しみから解放され、楽しく食事し、毎日を過ごして成長してほしいという思いです。

 書いてあることの責任は私にありますが、まだまだ分からないことがあり、今後も新しいことがどんどんわかってくるかもしれません。確かなことは、こどもたちが現代という時代に便秘のつらさから解放されるためには、ケアする人や医療者のそれなりの努力が必要であることです。しかしながら、その努力は決してつらいものではなく、みんなで楽しみながらできることだと信じています。