そもそも便秘とは
快適な排便とは、規則的に、時間もかからず、適度な硬さの便を排出することです。快適な排便は健康のバロメータのひとつです。おとなもこどももすっきり排便することでおなかの不快感がなくなり、食欲が増し、からだの活動も活発になります。では、そもそも便秘って何でしょう? 人にきくと、いろいろな答えが返ってきます。排便回数が少ないとき、排便しようと思ってもすぐにでないとき、便が硬いとき、「便秘」と表現したり、自分が「便秘だ」と考えるひともいるでしょう。おなかが痛くなって、排便すると痛みが消える、何日も便が出ないと食欲がなくなり、便が出ると食欲がもとにもどるといったときには「便秘だった」と思うこともよくあります。
こどもが排便するときに苦しそうにしているように見えたり、痛がったり、出血したり、硬い便を出すといったことがあると、「便秘だ」と感じるでしょう。小児科にかかるお子さんの3から5%は便秘を訴えているとも言われます。通常、3~4日以上自然排便がない状態を便秘といいますが、こどもの排便のようすは成長とともに変化します。1歳未満の赤ちゃんの調査によると、1日の排便回数は、生後1か月赤ちゃんでは1日5、6回排便する子が最も多いのですが、1歳になるころには、1日2回ぐらいに減ってきます。ただし、排便の回数はこどもによって大きな差があり、数日に1回、中には10日に1回の排便しかないこどももいるという結果でした。排便回数が少なくても本人はあまりつらくないこともある、ということを示しています。
別の調査では、1日の排便回数は3歳になると平均1日1回になるとの結果でしたが、1日1回排便するこどもたちは60~68%、つまり、3分の1のこどもは1日1回の排便とは限らないという結果でした。 したがって、毎日ウンチが出ないからといって、必ずしも便秘と考える必要はありません。排便回数が少なくても、こども本人がつらそうでなければ「そんなもんだ」でよいのです。「1日1回は便が出なくてはいけない」「今日は便が出ないので心配」ということはありません。こどもは、生まれたばかりのときは回数が1日10回以上にもなる子もいますが、だんだん回数が減ってきて、3歳以上になると平均で1日1回ぐらいになるというだけなのです。
でも、これでは納得がいかないかもしれません。
そこで、2013年(平成25年)小児慢性機能性便秘症の診療ガイドラインをつくったこどもの便秘の専門家のあいだで、便秘とは何かについてケンケンガクガク、いろいろ議論をしました。その結果得られたコンセンサス、すなわち、一致した見方は、便秘とは、「便がとどこおった、または便が出にくい状態である」というものでした。「便がとどこおった状態」とは、何らかの原因によって排便の回数や便の量が減った状態であり、「便が出にくい状態」とは、排便するのに努力や苦痛をともなう状態、こどもの場合は、ウンチをするときに痛みで泣いたり、いきんでも便がでない、排便できない状態、ということにしました。ガイドラインでは、「便秘」のためにからだの症状、例えばおなかの痛み、おなかのはり、食欲の低下、排便するときの痛みや出血といった症状がみられ、治療を必要とする場合を「便秘症」といっています。
何日か便が出なくて苦しんで、薬をのんだり浣腸を使って一度出てしまえばすっきりして、その後はだいじょうぶ、というのはよくあることかもしれません。これは、「急性便秘(症)」あるいは「一過性便秘(症)」ともいえるもので、生活に困るほどのことはありません。それでも、薬や浣腸のお世話にならない方がよいに決まっていますので、便秘にならないようにしたいものです。特にこどもでは、かたいウンチを出したときにおこる痛みや不快な思い、浣腸のようなおしりへの刺激は、「ウンチ」がきらいになり、やっかいな「慢性便秘症」のきっかけになるかもしれません。