排便のしくみ その4
1.トイレトレーニングによる排便
生まれたばかりの赤ちゃんの排便のしくみは、自律神経のはたらき、すなわち腸の勝手なはたらきによるものです。赤ちゃんは、お母さんのおなかの中で育つ間に腸管の自律神経のはたらきは備わります。口から入った母乳やミルクは胃の中に運ばれ、消化吸収されて残ったものは便となって大腸に運ばれます。さらに水分が吸収され、胃結腸反射や大蠕動によって直腸まで運ばれて便が作られます。直腸にたまった便は、直腸―脊髄(仙髄)―肛門という経路による副交感神経による排便反射により肛門から排出されます。排便を支配する排便反射も生まれつき備わっていて、直腸に壁を押すに十分な量の便が貯まると、反射により肛門から便は排出されるのです。
脳が排便を意のままにコントロールできるようになるということは、「ウンチ!」ともよおしたときに反応してトイレに行ったり、トイレに行きつくまでがまんすることができるようになるということです。そのためには、脳から脊髄を通って、からだの筋肉に指令を伝えるための神経経路ができあがっていなければなりませせん。神経経路が作られるのは、満2歳になるころといわれていです。それまでは、排尿や排便は、直腸や膀胱にはたらく自律神経を使った反射だけでおこっていて、脳からガマンしたり出そうと努力したりできないのです。脳から脊髄への指令、神経シグナル、の伝達は十分でないのです。つまり、トイレトレーニングは無理なのです。
もし、満1歳になる前に「トイレトレーニングできた」という話をきいたとき、そういわれているこどもでは、実は、親が「トイレトレーニングされている」のです。つまり、こどもの直腸に便がやってきたときのこどものようすを「親が」感じて「ウンチだ!」とわかったり、オシッコの頻度を「親が」学習し、その子の排尿や排便の反射がいつ来るかを予測してトイレで用を足せるようになったにすぎないのです。そのように「トイレトレーニングできた」と思っても、こどもが自分でトイレに行って用を足して出てくるという、完全な排尿・排便の制御ができるのは、脳からの指令が伝えられる神経経路が発達するのを待たなくてはなりません。