こどもたちの言い分

 子育ての中で食事が苦痛だと感じる親は多いというアンケート結果があります。せっかく準備した食べものをスプーンなどで口に運んでも、食べない、吐き出されると、「もお~~」「なんで~~?」と、多くの親にとってはストレスのたまる育児です。

 しかし、こどもたちは食べものを拒否しているのではないようです。こどもたちの立場から見れば、吐き出すのは、食べものについて安心を得るためのやり方なのです。こどもは、口に物を入れ、その味と舌ざわりを試して、そのあと吐き出しています。次の食事でもまた吐き出し、何度も吐き出します。

 ある研究では、1歳ごろには好ききらいが生まれ、おとな以上に味に敏感であることが示されています。しかし、新しいものは苦手で、最初は吐き出しますが、一つの食べものを繰り返し口に入れることで食べられるようになり、時には10回、20回と口に入れてやっと食べるようになるという報告もあります。

 つまり、まわりからみると、吐き出すのはきらいだからと見えるかもしれませんが、こどもにとっては当たり前、新しい食べものに用心深いだけだということです。おとなで新しい食べものを試すときと同じです。どんなよちよち歩きのこどもでも、食べものを口に入れるということとそれをのみこむのは別のことだということを知っているのです。ためしに少し口に入れて味や食感を確かめ、飲みこむかどうかを決めるのです。繰り返し口に入れて、「これなら食べてもだいじょうぶ」と納得してはじめて、ごくんと飲みこむこむようになるのです。

 考えてみれば、こどもたちにとって、お母さんのおっぱいとは違う、新しく出てくる食べものを「食べるいわれ」はないのです。それが何であって、どこからきて、どのように料理されたか知るよしもありません。まだ話すこともできないので、ただ見つめたり、さわったり、口に入れたりするしか方法はないのです。その用心深さは生存のメカニズムだという人もいます。毒かもしれない食べものをむやみに飲みこむわけにはいかないのです。かしこい、こだわりの強いこどもにとっては、それはいわば「生き残り」のための高い能力といってもよいかもしれません。

(Satter 著 ”Child of Mine” より)

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