食べものの消化と便
食べものが口にはいると、かみくだかれ、つば(唾液)と混ぜられ、飲みこむと食道を通過して胃に運ばれます。赤ちゃんは、口の中に入ったものはそのまま丸ごと飲み込みます。歯が生えそろって、食べ物をかんで食べられるようになるのは3歳頃だと言われています。
胃に入った食べものは、胃の動き、蠕(ぜん)動運動によって胃液と一緒に混ざり、十二指腸に運ばれます。蠕動運動というのは、食べものを消化し運ぶための腸管の動きです。腸管は消化管ともいい、口から肛門までつづきます。腸管には筋肉(平滑筋)や神経があり、そのおかげで腸管は動くことができます。腸管の動きは自律神経による動きで、脳の意図によるのではなく、腸管自身が自ら考えながら動くという性質があります。自律神経には、交感神経、副交感神経といった区別がありますが、これらの神経の働きにより、腸管の動き、蠕動運動がおこり、腸の内容を混ぜ合わせたり運んだりすることになります。この結果、食べものは消化され、食べものにふくまれる栄養が吸収されながら腸管を運ばれていきます。
十二指腸では、十二指腸乳頭部というところから胆汁(たんじゅう)と膵液(すいえき)という消化液が出てきます。食べものは、唾液、胃液、胆汁、膵液という異なる種類の消化液と混ぜ合わされますが、それぞれの消化液は異なる消化酵素をふくむため、食べものの中にあるさまざまな栄養分(糖質、たんぱく質、脂質)がこれらの消化酵素によって消化されます。小腸では、食べものがどんどん消化される一方、小腸の壁から吸収されていきます。特に小腸の終わりの部分に近い回腸では盛んに吸収されるといわれます。
やがて、おなかの右の下の位置で、小腸は大腸につながります。食べものの中には、栄養だけではなく、消化吸収できないものが含まれますが、大腸に行きつくころには栄養は吸収されて、便のもとになる便汁が大腸に送り込まれます。大腸のうちの最初の部分は盲腸と言われるところで、虫垂があります。大腸は、おなかの中をひらかなの「の」字を書くように、順に、上行結腸、横行結腸、下行結腸・S状結腸、直腸と名づけられた部分を経て、肛門につながります。大腸も蠕動運動により腸内容を肛門に向かって運んでいきます。大腸には栄養を吸収する力はありませんが、水分を吸収する力があります。このため、小腸から大腸に運ばれたばかりの便汁は、大腸を運ばれている間に水分が吸収されだんだんと固形のものつまり「便」になっていくのです。便の量は、小腸から大腸に運ばれてくる便汁の量や大腸から吸収される水分の量によって影響され、排便の回数は便の量や蠕動運動の速さによって決まると考えられます。